生まれる前から、オレはボンゴレ11代目だった。



「誕生日おめでとうございます。11代目。」
朝、目覚めたオレを一番に祝福してくれたのは、隼人だった。
覚醒が完全に至ったちょうど良い時に、通った声を出してくれる。
「ありがとう、隼人。オレもやっと14歳か。」
歳に対しては似つかわしくないだろうという言葉を出すのは、14歳にしては同年代の子供たちに比べて色々とありすぎたのだからである。
14年という数字はボンゴレ11代目として生きた年数と同列になる。
さすがに幼少の明確な記憶などはないが、母親のお腹にいる時から自分は11代目として生まれてくることを望まれていた。
初代から続くボンゴレの血が流れていなければボンゴレファミリーを継ぐ資格なしと言われているので、それは約束以上の確約でもあった。
そう、父親である10代目沢田綱吉は23歳という若さで銃殺されたのだから。
「本当に早いものですね。お側にお仕え出来て、オレは光栄です。」
優しい笑みを浮かべながら本当に嬉しそうに言ってくれる。
今日というの日の為か、いつにも増してとびきり上質の黒いスーツに身を包んだ姿は格好良かった。
「朝食を取られて着替えを済まされましたら、パーティー会場までお送りいたします。みんな11代目を心待ちにしていますよ。」
小型ディスプレイ型の電子スケジュール帳を確認しながらそう言ってくれる隼人は、父の右腕であり守護者でもあった人物だ。
生まれた時から側に居てくれたのでオレにとっては、父親であり兄でもあるような親愛を持っていた。
父親と同い年と聞いているが、初めて会った時から殆ど外見的変化がないので、忙しく仕事をしているのに不思議だといつも思う。
「わかった。じゃあ、お願いするよ。」
オレは一度伸びをしてから、天蓋のついたベッドからぽんっと降りた。
それを見ると、隼人はうやうやしく部屋を出る仕草をする。

そしてオレがそっちを見ていないことを確認してから、歴代ボンゴレボスの肖像画が飾られているこの自室のボンゴレ10代目に特別な敬礼をしてからいつも去る。
子供ながらにそのことに気がついたのは随分と早かったと思う。
ここは自分が存在する前は、ボンゴレ10代目の部屋だったのだから。









パーティーが控えているということで、今日の朝食は軽めに取った。
食事を大食するということはなかろうが、次々に注がれる飲料物を考えると、このくらいが最適だろう。
この日のためにオートクチュールに頼んだ真っ白なスーツに身を包んだ後、再び護衛の為に横へとついた隼人の先導のもと、車に乗り込んだ。
運転席助手席共に堅牢な男たちが乗り込み、前と後には同じく黒塗りの車が護衛として控える。
自動で開いた広い後部座席に座ったオレの横には、きちんと隼人が乗ってくれる。



ほどなく発進した車内で、隼人が明日以降のスケジュールを簡単に示した後、ずっと気になっていたことをオレは聞いた。
「今日の誕生日パーティーって、なんか今までのに比べて随分と盛大だよね。何か特別なことでもあるの?」
誕生日パーティーは毎年行われていたが、今回に限っては準備段階からして随分と前から計画されていたようで、この日のためにと色々と予定が詰まっていた。
ボンゴレ11代目として名はあるが、ファミリーとしての実質的な実務は幹部の力を借りてやっているのが殆どであったので、今回のことも詳しくは聞いてなかったのだ。
「…はい。誕生日パーティーの後に、式典も予定されています。」
少しだけ視線を外してそう言った隼人の仕草を俺は見逃さなかった。
「もっと詳しく説明して。」
少しだけではあるが、命令口調で隼人に何か言うのは子供の我が侭として使った昔以来、なかったことだ。
でも何かが…超直感が深く聞くべきだと伝えたから、鋭く言った。

「………式典では10代目守護者全員よりボンゴレリングが返還されることになっています。ちょうど10代目が大空のリングを継承したのが14歳の時でしたので、次は11代目自身の守護者が継承することになっています。」
言いにくそうにしたが、もう黙ってもいられないので隼人は滞りなく事実を言った。
大空のリングはハーフボンゴレリングの形を取る前にもう11代目の指に収まっている。
あとは、自分の右手の中指に嵌っている嵐のリングを始めとした守護者のリングの番であった。
生まれる前からボンゴレ11代目の継承が決まっていたとはいえ、まだ幼い11代目にすべてを継承することは出来なかった。
14歳になるまでは生き残っている10代目守護者たちで補佐をして支えていくということが、掟として刻まれたのだった。
「な、に…それ。オレ、そんなこと聞いてないよ!」
リングや守護者のことは昔からよく聞かれさていたので、知っていた。
でもこんなに突然なんて考えもしていなかったから、酷く動揺する。
「申し訳ありません。他言は止められておりましたので。」
車内ではあったが、隼人は深々と頭を下げた。
騙していたつもりはないが、11代目からすればそう取られてもおかしくはない事柄だった。
「嫌だよ。じゃあ、もうリングの守護者は決まっているの?父さんと同じ時のように…」
早く自分の守護者を望まれているのはわかっていたけど、ボンゴレの血を受け継ぐ次世代の子供はもう自分しか残っていない。
父である10代目のリング守護者は勝手に決められたと聞いているので、それが頭を過った。
「はい。門外顧問の家光様並びに幹部の皆さんがお決めになられております。」
拒否をされるとわかっていても隼人は言葉を続けた。
新しい守護者は11代目と認識のある人物を選定したつもりだが、本人が納得していないところで決められて、それは誰だって嫌だというのはわかってはいた。



「…新しい守護者に、もちろん隼人は入ってるよね?」
ずっと守ってくれるものだと思っていたから、当たり前のようにオレはそう言った。
もしかしたらこの時、少し声が震えていたかもしれない。
直ぐに結末を聞くのが怖かった。

「僭越にもそういった打診を頂きましたが、オレは辞退させて頂きました。」
改めて申し訳なさそうに隼人は言った。






やっと、このリングをお返しできる日が来た。
出来れば頂いたあの方に直接お返ししたかったが、それは一生叶わぬこと。













忘れ形見に愛はない 1

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